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理工学部 研究ガイド2022

酵素を阻害するペプチドを合成し、がんの治療薬開発に役立てる

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INTERVIEW 04 酵素を阻害するペプチドを合成し、がんの治療薬開発に役立てる
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山平 多恵子 TAEKO YAMAHIRA

理工学部 応用化学コース 准教授

東京大学大学院理学系研究科化学専攻博士課程修了。博士(理学)。京都薬科大学COEポスト・ドクター、京都府立医科大学中央研究室研究員、早稲田大学理工学術院講師などを経て現職。「化学総論 I, II」などの授業を担当。

特定の酵素を阻害する新規ペプチドを化学合成

長年、日本人の死因の1位となっているのが「がん」だ。そんながんの治療薬の開発につながる研究をしているのが、応用化学コースの山平多恵子准教授だ。
「特定の酵素を阻害する役割を担うペプチドを合成し、新しい抗がん剤開発への可能性を模索しています。ペプチドとは、複数のアミノ酸がつながってできた化合物で、身近なものでは食品に含まれる成分としても知られています。ペプチドがさらに大きくなったものが皆さんもよく知っているタンパク質です。私が取り組んでいるのは、ペプチドを基盤とした酵素阻害剤の合成で、『ペプチド化学』と呼ばれる研究分野となります」
 酵素の反応は、よく「鍵と鍵穴」に例えられる。酵素がもつ「鍵穴」に、基質と呼ばれる「鍵」に相当する物質が入り、化学反応が起きている。酵素が作用できる基質は限られており、あたかも鍵と鍵穴のような関係なのである。山平准教授が狙うのは、「鍵」となる基質に似たペプチドを合成し、「鍵穴」を塞いでしまうことだという。
「実験では、候補となるアミノ酸をさまざまなパターンでつなげたペプチドを合成し、疾病に関わるとされる酵素を阻害できるかどうか試します。根気が必要な作業ですが、狙った構造のペプチドが合成され、狙い通りの効果が得られたときはうれしいですね」

合成したペプチドを載せた質量分析計で用いるプレート

新しい物質を設計し、合成できるのが化学の魅力

山平准教授は学生時代、化学を専攻していた。触媒を利用した化学反応を研究していたが、大学院修了後に化学合成のテクニックを活かして創薬の道へと進んだという。
「化学の分野から製薬会社や化粧品メーカーに就職する人は一定数います。有機合成や分析化学など、必要と思われる知識を深め、スキルを磨いておくとよいでしょう。目的に合った物質をデザインして合成し、目の前の課題を解決していけるのは化学の面白さの1つです。私も現在、ペプチドの化学合成を通して、がんや、アルツハイマー病などの新規治療薬開発につながる研究を行っています。アミノ酸をつなげていくことにより、将来的にさまざまな疾病の治療薬の開発に貢献していけたらと思っています。」