研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2022
研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2022
古澤 峻 SHUN FURUSAWA
理工学部 数理・物理コース 准教授
早稲田大学大学院博士後期課程修了。博士(理学)。国立天文台、フランクフルト先進研究所、理化学研究所、東京理科大学を経て、2021年に関東学院大学に着任。「数値計算」、「相対性理論」などの授業を担当。
「超新星爆発」と聞いて、正確に説明できる人はいるだろうか。「超新星」とあるだけに、星の誕生と思われがちだが、むしろそれは正反対。超新星爆発とは、死期を迎えた巨大な星が、消滅する前に起こす大爆発だという。
「私の研究対象である重力崩壊型超新星爆発は、太陽の約10倍以上大きい大質量星の最期の大爆発で、その跡には、中性子星やブラックホールが残ると考えられています。また、私たちがいま吸っている酸素、塩をつくる塩素やナトリウム、血や骨をつくる鉄やカルシウムの一部もこの重力崩壊型超新星爆発で放出されたものです。つまり、超新星爆発を知ることは、この世界や人間の起源を明らかにすることにもつながるのです」
そう語るのは、数理・物理コースの古澤峻准教授だ。専門は「理論宇宙物理学」。高度な数学の知識を用いて、天体の進化について研究している。
超新星爆発のメカニズム解明には、スーパーコンピュータ(スパコン)を使った複雑な計算を用いる。「京」や「富岳」など日本を代表するスパコンを使って、実験を行う研究チームにも参加している。「理論宇宙物理学の手法では、超新星爆発によって、どれくらいのニュートリノが放出されるかなどをパソコン上のシミュレーションで明らかにします。ご存じの通り、ニュートリノは素粒子のひとつです。小柴昌俊先生(故人)が、1987年の超新星爆発で地球に飛んできたニュートリノを世界で初めて観測して、ノーベル物理学賞を受賞したことでも知られています。こうした観測と計算の両輪で宇宙の謎に迫ることが重要なのです」
超新星爆発と日本人の関係は古く、平安時代末期の歌人・藤原定家が記した『明月記』(1235年)にも超新星の記録が残っているという。最近では、オリオン座の恒星ベテルギウスに超新星爆発の兆候があるとも言われている。さらに、地球のある天の川銀河では、数百年に1回のサイクルで超新星爆発が起きており、私たちが生きている間にも超新星爆発が観測できる可能性があるという。
「宇宙の進化を知るには、素粒子物理学、統計力学、相対性理論など幅広い知識が必要です。その難解さがこの研究の面白さでもあります。超新星爆発以外にもダークマターなど解明したいことは山ほどあります。関東学院大学の研究環境をフル活用して、宇宙の謎に迫りたいと考えています」