研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2022
研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド2022
髙橋 聡 SATOSHI TAKAHASHI
理工学部 情報ネット・メディアコース 講師
東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻博士後期課程修了。博士(工学)。株式会社構造計画研究所、東京理科大学助教を経て現職。「データ解析基礎」「情報システム論」などの授業を担当。
ギャル系、モード系、ストリート系……これらのキーワードは、ファッションのカテゴリーを表したものだ。同じギャル系でも1990年代の「ガングロ」と呼ばれた層は日焼けした肌がアイデンティティだったが、2020年代に入ると「白ギャル」と呼ばれる色白の層が人気だという。同じカテゴリーでも時代ごとに違いがあるのが興味深い。
そんなファッショントレンドの変遷をAI(人工知能)を使って分析している研究者がいる。情報ネット・メディアコースの髙橋聡先生だ。
「ファッションカルチャーの先行研究をベースに、1970年から2017年までのストリートスナップをコンピュータに読み込ませ、分析を行っています。目的は、時代ごとにどのようなファッショントレンドがあったのかを明らかにすること。そこで見えてきたトレンドと時代背景や経済状況などと重ね合わせて、何らかの法則を見つけ出したいと思っています。これは社会シミュレーションという研究分野で、新型コロナウイルスの感染拡大予測などにも使われているんですよ」
社会シミュレーションとは、ビッグデータとAIを用いて、社会を「見える化」する研究分野のこと。一人ひとりの人間をモデリング化し、各々が独自の判断で行動したとき、社会全体がどうなるか予測することができるという。
実験では、共同研究者が撮り溜めた15,000枚以上のストリートスナップを分析。「ギャル」「フェアリー」「モード」「ストリート」「ロック」など、全14カテゴリーに分類し、時代ごとに並べ替え、その特徴を抽出していく。また、各カテゴリーの写真の割合を年代ごとに出していくと意外なトレンドが見えてくることもあるという。
あくまでAIが服の特徴からだけで判断した結果なのですが、90年代にギャルと認識される画像は、はじめ原宿で爆発的に増え、渋谷に波及していったことがデータからわかります。ギャル=渋谷というイメージが少し変わりますよね。他にも社会現象を定量的に観測すると見えてくることはたくさんあります。データは嘘をつきません。社会のモヤッとした印象がクリアになるのがこの研究の面白さです」
現在は大量のデータを分析している段階だが、いずれは色やスタイルのトレンド変遷の原因を探り、理論構築まで研究を進めるのが髙橋先生の目標だ。ファッショントレンドの新理論が、関東学院大学の研究室から生まれるかもしれない。