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理工学部 研究ガイド2022

日本各地で増加傾向にある強風災害から社会インフラを守る

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INTERVIEW 09 日本各地で増加傾向にある強風災害から社会インフラを守る
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中藤 誠二 SEIJI NAKATO

理工学部 土木・都市防災コース教授

東京大学大学院工学系研究科社会基盤工学専攻博士課程修了。博士(工学)。2001年に関東学院大学に着任。「構造の力学I・II」「構造デザイン」などの授業を担当。

風という複雑な流れを風洞実験でとらえる

日本では今、台風の被害が増加傾向にある。地球温暖化などの影響で海面温度が上昇し、勢力を保ったまま日本に上陸する台風が増えていることが原因だという声も多い。さらに最近は、アメリカ本土のような巨大な竜巻が、日本国内でも観測されることがある。自然災害というと地震や水害がクローズアップされがちだが、今の日本では風の災害も決して無視できない。こうした風による災害を防ぐための研究を行っているのが、土木・都市防災コースの中藤誠二教授だ。
「研究対象は、構造物と風の相互作用です。橋梁などの構造物を強風の影響から守るのが目的です。流体としての風は、実は未解明の部分が多い。物理現象としては、まだまだわかっていないことだらけなのです。外力としての風は、流体が複雑で、風速が同じでも風圧が違うなど、構造物への作用が非常に予測しにくいのが実状です。そこで私は、目に見えない風の影響を調べるために、風洞実験や数値シミュレーションによって、その特性を明らかにしようとしています。これは風工学と呼ばれる研究分野となります」
中藤教授が注目するのが、構造物まわりの風の流れだ。円柱や四角柱など、基本的な物体のまわりでも風の流れは複雑で予想外の特性を示すという。そこで研究室では、オリジナルの風洞実験装置を作製し、橋梁などを模したさまざまな模型に風を当て、風荷重や風圧、構造物まわりの風速の変化などを計測し、そのデータを解析している。

風洞実験に用いる橋を模した木製の模型

強風に耐える構造物の形状を分析しより安全なものに

「橋に当たる風も、山や谷などの周囲の地形の影響を受けて、さまざまな特徴を帯びます。基準に従って設計した橋が、風速20メートル程度の風で大きく振動して、時には破壊されてしまうようなことが起こります。風工学の研究対象は、自然の中
で起こる現象なので、計算ですべてを知ることは難しい。だからこそ、現象のメカニズム解明に挑む面白さがあります」
 実験で取得したデータ解析の成果は、風災害の対策だけでなく、風による騒音やビル風の対策にも役立つという。風という物理現象を詳しく知ることで、構造物の進化にも寄与できる。
「例えば、強風に耐える橋桁の断面形状がわかれば、より遠くに橋を架けることができます。材料コストを抑えることもできるでしょう。社会インフラの安全性確保や持続可能な利用に貢献していきたいですね」