研究報
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関東学院大学_研究ガイド

理工学部 研究ガイド vol.2

ハプト藻が合成するアルケノンで未来のバイオ燃料を開発する

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INTERVIEW 01 ハプト藻が合成するアルケノンで未来のバイオ燃料を開発する
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新家 弘也 HIROYA ARAIE

理工学部 生命科学コース 助教

筑波大学大学院環境科学研究科環境科学専攻博士前期課程修了、筑波大学大学院生命環境科学研究科情報生物科学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。筑波大学生命環境系助教を経て、現職。「植物生態学」「藻類利用学」などの授業を担当。

植物プランクトンである藻類が切り拓くエネルギーの未来

次世代エネルギーへの関心が高まるなか、トウモロコシやサトウキビといったバイオ燃料に注目が集まっている。そんななか、生命科学コースの新家弘也助教が未来のバイオ燃料として注目するのが、「ハプト藻」と呼ばれる藻類の一種だ。植物プランクトンである藻類が切り拓くエネルギーの未来とはどのようなものなのだろう。
「藻類は、光合成により二酸化炭素から物質をつくり出す、持続可能な原材料です。私はハプト藻が合成するアルケノンという脂質に着目し、研究を行っています。アルケノンは、石油と同じ方法で精製できるバイオ燃料としての応用が期待されています」
研究のスタート地点は、地球環境への興味だった。そこで、地球を支える一次生産者である植物に興味を持ち、植物プランクトンの細胞内の代謝生理の研究に取り組んだ。そして、さまざまな研究の過程で知ったのがハプト藻だった。
「アルケノンを合成できるハプト藻は、世界で5種類しか知られていません。私は、その中の1種を用いて、よりアルケノン生産に適した突然変異株を創出する実験を行っています。使用するのは重イオンビームです。これを照射することで、アルケノンをより多く蓄積する株をつくり出し、その特徴を細胞レベルで調べています。ハプト藻の突然変異株によって、アルケノンを大量生産できれば、バイオ燃料としての応用への道筋も見えてきます」

光学顕微鏡で観察したハプト藻の写真

化粧品や医薬品開発につながる可能性もあるハプト藻研究

新家助教は、ハプト藻を用いて、ほかにもさまざまな研究に取り組んでいる。そのひとつが、藻類が合成するエキネノンと呼ばれる色素(カロテノイド)の研究だ。エキネノンは、β-カロテンからアスタキサンチンが合成される際の中間体にあたる物質。アスタキサンチンといえば、美容成分として幅広く知られている。ハプト藻にエキネノンが蓄積されるメカニズムを解明できれば、化粧品や医薬品の開発につながる発見も期待できるという。
「植物プランクトンの世界は、いまだに謎だらけです。30億年前に地球上に現れ、酸素をつくり出したのは植物プランクトンである藻類です。藻類のおかげで今の地球があるといっても過言ではありません。藻類の特殊な代謝機構を解明するこの研究は、地球の未来を変えるような大きな可能性を秘めていると考えています」