研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド vol.2
研究報
Research Expectations
理工学部 研究ガイド vol.2
船木 靖郎 YASURO FUNAKI
理工学部 数理・物理コース 准教授
京都大学大学院理学研究科物理学・宇宙物理学専攻博士後期課程修了。博士(理学)。2017年関東学院大学着任。「力学」「量子力学」「相対性理論」「物理数学」などの授業を担当。
高校の教員だった父親のもとには、毎月、科学雑誌『ニュートン』が届いた。そこには、相対性理論、量子論といった不思議な理論が、きれいなイラストで解説されていた。「こういうのが全部わかったら人生はきっと楽しいだろう」当時、中学2年生だった少年は、迷わず理論物理学者を志した。それから約30年、数理・物理コースの船木靖郎准教授は、その夢を実現し、物理学の研究に没頭する日々を送っている。
「理論物理学には、シンプルな美しさがあります。たったひとつの方程式から世の中のほとんどすべての現象が説明できたりする。例えば、有名なニュートン方程式F=maからはエネルギー保存の法則や運動量保存の法則が導き出せます。こんなふうに、あらゆる法則がすべて基本の方程式から出てくるので、あれこれ暗記する必要がないんです。こうしたTheory of Everything(万物の理論)を追究するのが理論物理学の面白さなのです」
そんな船木准教授が現在取り組んでいるのが、「原子核」の研究だ。原子核は、原子の中心にあり、陽子と中性子で構成されている。物理学が得意な高校生なら、きっと知っているだろう。船木准教授は、量子力学の基本法則を用いて、原子核のモデルを立て、コンピュータシミュレーションによって、目に見えないその姿を解明し、新たな物質の存在形態を追究している。
「生命の誕生に不可欠な炭素や酸素などの元素は、恒星の中で生まれたとされています。でもその元素、つまり原子核の構造には謎が多く、それが持つエネルギーや環境によって、自在に姿を変える“お化け”のような存在なのです」
原子核の中では、陽子や中性子が互いに影響し合いながら自由に動き回っている。この様子は、古くから「殻模型」と呼ばれるモデルで説明されてきた。これに対し、船木准教授の研究グループは、「αクラスター凝縮模型」という新たなモデルを提示し、原子核の励起状態を説明することに成功した。励起状態とは、エネルギーレベルの高い状態のこと。これは、炭素や酸素といった誰もが知る元素が、どうやってできたのかという謎を解く鍵になる可能性もあるという。
「量子力学を用いた原子核の世界のTheory of Everythingを確立するのが目標です。自然の認識を変えてしまうような新たな法則を見つけたいですね」