研究報
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関東学院大学_研究ガイド

理工学部 研究ガイド vol.2

ナノ粒子を合成するMicroTASで医療用分析センサの未来を変える

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INTERVIEW 05 ナノ粒子を合成するMicroTASで医療用分析センサの未来を変える
yagyu

柳生 裕聖 HIROMASA YAGYU

理工学部 先進機械コース 教授

京都大学大学院工学研究科マイクロエンジニアリング専攻博士後期課程修了。博士(工学)。三ツ星ベルト株式会社研究員を経て、2013年より現職。「機械材料」などの授業を担当。

Micro TASを用いて合成した金ナノ粒子

MEMSの加工技術を用いてガラス基板に微細な流路を形成

MEMS(メムス)と呼ばれる機械分野の微細加工技術がある。Micro Electro Mechanical Systemsの略で、半導体電子回路などのデバイス自体を指すこともある。
先進機械コースの柳生裕聖教授は、MEMSを用いて合成したナノ粒子、ナノ材料の研究を行っている。
「MEMSは、私たちの生活に欠かせないデバイスです。スマートフォンや自動車のエアバッグのシステムに搭載された各種センサなどで使われています。私は、MEMSの技術をさらに応用したMicroTAS(マイクロタス)と呼ばれるデバイスを用いて、化学合成や物質の操作、医療系の検査などを効率的かつ高精度に実現する研究開発に取り組んでいます」
MicroTASは、MEMSの加工技術を用いてガラス基板上に微細な流路を形成した特殊なデバイスのこと。柳生教授は、MicroTASを用いて、主に金や銅などのナノ粒子を合成している。こだわっているのは粒子の精度だ。マイクロレベルの流路を使って合成を行うことで、サイズのバラつきのないナノ粒子をつくることができる。これが研究開発において、極めて重要だという。

バラつきのない金ナノ粒子を医療用分析装置で活用する

「例えば、カレーをつくる際、大鍋で50人分つくるのと、小鍋でひとり分つくるので、味のバラつきが変わりますよね。同様にビーカーでもナノ粒子はできますが、MicroTASの微細な流路でつくることでその精度は大きく向上するのです。特に力を入れているのは、金ナノ粒子の合成です。応用先は、インフルエンザや妊娠を検査する医療用分析装置。バラつきのない金ナノ粒子を合成できれば、少量で検査を実現でき、医療系企業から注目を集めています」
柳生教授は大学で機械工学を学び、化学メーカーに就職。金属ナノ粒子の研究開発に従事した後、大学院でMEMSやナノ材料の研究に取り組んだ経歴を持つ。現在の研究テーマは、実社会のニーズを反映しながら、機械工学と化学の最先端研究を融合した内容だといえる。
「現在は、関東学院大学の材料・表面工学研究所と共同で、本格的な医療用分析センサの開発にも取り組んでいます。MicroTASの技術で社会に貢献できればと考えています」