研究報
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関東学院大学_研究ガイド

理工学部 研究ガイド vol.2

マイクロプラスチックの問題を分析化学の手法で解決する

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INTERVIEW 03 マイクロプラスチックの問題を分析化学の手法で解決する
kamata

鎌田 素之 MOTOYUKI KAMATA

理工学部 応用化学コース 准教授

北海道大学大学院工学研究科都市環境工学専攻博士課程修了。博士(工学)。国立保健医療科学院研究員を経て、2004年関東学院大学に着任。「環境工学」「分析化学」「水処理工学」などの授業を担当。

サッカー場の排水口で採取したマイクロプラスチックに着目

鼻にストローが刺さり、苦しそうにしているウミガメの動画を見て、心を痛めた人も多いだろう。大手コーヒーチェーン店がストローをすべて紙製ストローに変更するなど、プラスチックへの関心は世界的なトレンドになっている。しかし、プラスチックによる弊害は、もっと身近なところに迫っているという。
「マイクロプラスチックによる環境汚染のことを知っていますか? ストローや容器包装に使われるプラスチックだけでなく、私たちがさまざまな場面で使用しているプラスチックが微細な粒子となり環境中に大量に放出されています。直径5mm以下のマイクロプラスチックは魚介類や水生生物だけでなく、人間からも検出されており、さまざまな影響が懸念されています」
そう語るのは、応用化学コースの鎌田素之准教授だ。専門は、水道工学や分析化学で、長年、水道における農薬類等の微量汚染物質に関する研究に取り組んでいる。マイクロプラスチックはこれまで海洋を中心に研究が進められてきた。鎌田准教授は、自らの経験を活かし、水道水源となる河川等の水環境に関連するマイクロプラスチックに着目している。
「私が注目しているのは、人工芝由来のマイクロプラスチックです。これまでの調査では、サッカー場やテニスコートなどから降雨時に大量のマイクロプラスチックが流出していることがわかってきました。現在はより詳細な調査で、人工芝由来のマイクロプラスチックが水環境に与えるインパクトを評価しているところです」

直径5mm以下のカラフルなマイクロプラスチック

有害な化学物質や病原性微生物を吸着するマイクロプラスチック

鎌田准教授によると、マイクロプラスチックには、有害な化学物質を吸着する性質があるという。さらに、最近の研究では、マイクロプラスチックでは病原性微生物も増殖するという報告もある。マイクロプラスチックを人間が体内に取り込んだ際の影響についてはまだまだ不明な点が多く、研究はこれからだ。
「降雨時にグラウンドの排水口の水を採取し、マイクロプラスチックの数、種類、大きさを顕微FTIRで分析しています。さらにこれまでの経験を活かし、吸着している化学物質の種類、濃度を高分解能質量分析計で解析しています。実態がわかれば、具体的な対応策や代替案を提案していく必要があるでしょう。マイクロプラスチックや化学物質など、私たちが見ることのできない物を分析機器を駆使して数値化し、さまざまな環境問題を解決していきたいです」