研究報
Research Expectations
理工学部 情報学部 研究ガイド2026
研究報
Research Expectations
理工学部 情報学部 研究ガイド2026
中山 良一 NAKAYAMA Ryoichi
理工学部 応用化学コース 講師
日本大学大学院生物資源科学研究科生物資源利用科学専攻博士後期課程修了。博士(生物資源科学)。専門は「化学工学」。「化学工学」「食品工学」などの授業を担当。
保湿クリームや乳液などの化粧品を買った際に、べたつきやが気になったり、つっぱり感があるなどの肌トラブルを経験した人は少なくないだろう。化粧品の粘りやとろみを調整する際には、主に増粘剤が用いられる。しかし、化学合成された増粘剤や薬品は種類や配合量によって、べたつきの原因となったり、肌荒れを引き起こす危険性も指摘されている。応用化学コースの中山良一講師は、増粘剤を使わずに化粧品の粘度をコントロールする技術の開発に取り組んでいる。
「活用するのはキャピラリーサスペンションという現象です。これにより、クリームや乳液などの化粧品に添加液体を加えるだけで、簡単に粘度を調整することができます。化学製品を使わないので肌トラブルの心配が少なく、環境負荷の少ない製造技術の開発にもつながります」
ここでいうサスペンションとは、固体の粒子が液体中に分散している状態を指す。化粧品の成分であるシリカ粒子やオイルなどが混ざった集合体と考えていいだろう。ここに蒸留水などの添加液体を加えることで、固体の粒子をつなげるキャピラリー(液架橋)効果が発生し、粘度が高まる。加えて、時間が経過しても粘度の安定性を維持できるのだという。
「社会実装に向けた最大の課題は、実験室の手法が大量生産に耐えうるかどうかです。現在は手作業で撹拌しており、水分量がわずかでも最適値を外れると粘度が劇的に変化してしまいます。今後は、大規模な製造ラインでも均一な分散と厳密な配合制御を再現できるよう、スケールアップ技術の基盤づくりに貢献したいと考えています」
中山講師は、この研究に関連して液体の粘性や固体の弾性を数値化して評価する「レオロジー」と呼ばれる分野の研究にも取り組んでいる。
「 材料の滑らかさを測定する装置を使用して、『サラサラ』 『ベタベタ』『とろとろ』『もちもち』といったテクスチャーを数値化する研究も進めています。これは化粧品だけでなく、高齢者向けの介護食を評価する際の指針としても役立つと考えています」
現在、高齢者施設などでは、嚥下機能が低下した高齢者が誤嚥によって亡くなるケースが増えている。介護食の粘度や弾性などを感覚値でなく、数値で表せれば、事故を予防できる可能性も高まる。
「 キャピラリーサスペンションを用いて、米粉などを使った 嚥下能力に応じた介護食の開発にも取り組んでいます。この研究の面白さは日常生活に身近なものを創り出すことに貢献できる点にあります。社会実装を目指し、化粧品や食品の商品開発につながる研究を推進していきます」