研究報
Research Expectations

2026v2

理工学部 情報学部 研究ガイド2026

リハビリテーションの効果を測る共通のものさしで、医療現場を支える

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近藤 夕騎 KONDO Yuki

情報学部 講師

筑波大学大学院博士後期課程修了。神経難病専門の国立精神・神経医療研究センターにて、理学療法士として臨床研究に従事。博士(工学)。「医療データ処理」「病態生理学/予防医学」どの授業を担当。

急速に増加するパーキンソン病
リハビリテーションの効果を共通指標で評価

パーキンソン病の患者数は、高齢化の影響などにより世界的に急速な増加が予測されている。2015年時点で約600万人とされていた有病者数は、2040年には1400万人を超える見通しだ。情報学部の近藤夕騎講師は、国立高度専門医療研究センターで約11年間、理学療法士としてパーキンソン病をはじめとする神経難病の患者と向き合ってきた。
「パーキンソン病は完治こそ難しいものの、リハビリテーションテーションによって症状の進行を緩やかにすることが可能です。しかし、そのリハビリテーションの効果を測定することは非常に難しく、理学療法士個人の長年の経験や主観に基づいて、どの程度改善したかを語られることが一般的です」
そこで近藤講師は、データに基づいた客観的な評価を実現するための「アウトカムメジャー」、いわば共通の“ものさし”の開発に挑んでいる。

AIとデータ活用による
リハビリテーション効果測定の標準化

動画解析によって、運動障害を可視化するシステムを開発

アウトカムメジャーは、リハビリテーションの効果測定や経過観察のために活用される。神経難病の患者数が増加の一途をたどる今、医療現場の誰もが同じように効果測定を行えるアウトカムメジャーの必要性は、今後さらに高まっていくだろう。
「理学療法士の『なんとなく良くなった』という主観的な評価では、評価者によって解釈が異なるため、医療全体としての質の向上を望むことはできません。また、医療大規模データの活用が加速する中で、データ化されていない知見は活用できず、医療の進化に遅れをとることにつながります。そのため私は、“なんとなく”を数値化することを目指し、システムの開発に取り組んでいます。例えば、パーキンソン病が進行すると『すくみ足』という症状が生じます。患者が歩こうとしているにもかかわらず足が前に出なくなるこの症状は、深刻化すると転倒リスクが高まり、患者のQOLに大きく影響します。そこで、症状の有無や程度に応じて専門家がラベル付けした歩行動画を教師データとして活用し、患者の歩く様子を撮影するだけで『すくみ足』の症状を自動で評価するAIシステムなどを開発しています」
近藤講師はこうしたシステムや、症状を正確に捉えるための患者への包括的な質問紙の開発など複数のものさしづくりを進めている。現在これらは、複数の医療機関で試験的に活用されており、共通指標としての妥当性を検証している段階だ。社会実装できれば、症状の進行や改善の度合いを、客観的な指標に基づいて評価できるようになる。
「超高齢化社会を迎えた今、医療現場は常に多忙を極めています。少しでもその負担を減らせるように、使い勝手が良く高精度な“ものさし”を開発し、医療現場を支える基盤づくりに貢献したいと考えています」