研究報
Research Expectations

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特集:日々の生活を支えるインフラ

2.リハビリの研究者がなぜ大学院でAIを学んだのか 医療現場で感じた課題を解決するために

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INTERVIEW 02 リハビリの研究者がなぜ大学院でAIを学んだのか
医療現場で感じた課題を解決するために
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近藤 夕騎 KONDO YUKI

情報学部 講師

学位:博士(工学)
専門分野:リハビリテーション科学

医療現場で抱いた「疑問」を解きたくて、研究の道へ

病気や怪我をした人などに行う「リハビリテーション」。この領域の課題解決には「AIが有効」だと考え、研究を進めているのが、情報学部の近藤夕騎講師です。

近藤は11年間、理学療法士というリハビリテーション専門職として医療機関で勤務していました。向き合ってきたのは、「神経難病」といわれる根治療法(根本的に治す治療法)のない病気。具体的には、パーキンソン病や脊髄小脳変性症がそれに当たります。これらを患う人のリハビリテーションを行ってきました。

臨床で働きながらノウハウを積む中で、近藤は現場の疑問を研究として掘り下げることに早くから着手していました。大学講師に転じたことで、研究活動はさらに加速していきます。「研究を行う上で大切にしてきたのは、クリニカルクエスチョン(臨床的疑問)の視点です」。

クリニカルクエスチョンとは、簡単にいえば医療現場(臨床)で働いていると生じてくる疑問のこと。現場にいる時に感じた課題やわからない点を、研究で解き明かそうとしてきました。

AIを活用し始めたのは、こうした研究を進める過程でのこと。「どうすれば医療現場の課題や疑問を解消できるのか。その方法を模索する中で『AIが有効になる』と考えました」。

パーキンソン病の大きな課題にAIを用いる

具体的には、どのようにAIを活用しているのでしょうか。一例として挙げるのは、AIによる「姿勢推定技術」です。これは、人の動画や画像から肩や肘、膝といった関節点の位置をAIが検出し、どのような姿勢かを推定する技術。この技術を応用して、パーキンソン病などに見られる「すくみ足」という症状の研究を進めました。

すくみ足とは、パーキンソン病患者の約半数に現れる症状で、「歩こうとしているのに、足が前に出なくなってしまう現象」だと近藤は説明します。発症すると転倒する危険もあるため、日頃の治療で少しでもすくみ足の症状を抑えなければなりません。そのためには、施した治療の効果を測定し、より効果のある治療法を確立していく必要があります。

「そこで重要になるのが、治療の前後で『すくみ足の症状が出にくくなったか』を測定することです。これまではその測定をするために、すくみ足を誘発するような環境で患者に歩いてもらい、その動画を見ながら専門家が手作業で『すくみ足が出現した時間』を計測していました。非常に手間のかかる方法だった
といえます。この作業を自動化し、現場の負荷を軽減できないか。そう考えたときに、AIの姿勢推定技術を活用するのが最適だと判断しました」

AIの技術により、治療の効果測定を「効率化」する

この考えをもとに開発したのが、AIによるすくみ足検出システムです。患者の動画をAIの姿勢推定技術で分析し、「すくみ足が出現している」と思われる部分を検出。時間などを自動で測ります。今まで人が行っていた作業をAIが代替し、効率化を図るものです。

「医療現場では、患者の診察や治療が積み重なり、従来通りのやり方では治療後の評価や効果測定に時間もかかり、治療に即時反映することはできません。AIの活用は、こうした課題を解決するために重要になります」

さらにはAIの導入が進むと、医療の詳細なデータを蓄積することにもつながります。これも大きなメリットだと近藤は考えます。なぜなら今後、より高度な医療を目指すためには、さまざまなデータを分析することが不可欠。その未来に向けて今からデータを蓄積することが大切になるのです。

これらの研究を行うにあたり、医療現場の課題を解決するには、これまで歩んできたリハビリテーションの知識だけでは限界がある。そう感じた近藤は、AI・情報工学を学ぶため、筑波大学大学院に3年間通いました。「今まで自分が歩んできた学問とはまったく異なる分野で最初は戸惑いましたが、基礎から学んだからこそ今の研究に繋がっています」と振り返ります。

AIを活用したシステムの“開発”を進めてきた近藤。今後は、開発したシステムをどのように医療現場へ実装していくのか、そのプロセスを考えていきたいと力を込めます。目標に向かい、新しい学びを続ける探究者。近藤の挑戦は、未来の医療のためにあります。

※本記事は2026年7月に作成したものです。