研究報
Research Expectations

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特集:日々の生活を支えるインフラ

4.AIの普及によって消費者はどう変わる? その変化の構造を解明していきたい

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INTERVIEW 04 AIの普及によって消費者はどう変わる?
その変化の構造を解明していきたい
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渋瀬 雅彦 SHIBUSE MASAHIKO

経営学部 准教授

学位:博士(経営学)
専門分野:マーケティングリサーチ

インターネット、デジタル化の中で変化し続ける消費者

インターネットが日本に普及し始めてから30年余りが経過し、Google、TikTokやInstagramなど多くのネットサービスが浸透していく中で、人々のメディア接触や買い物の方法も大きく変化していきました。普段の生活の中でも、InstagramやTiktokで知人やインフルエンサーから情報を得て商品を買ったり、スマホで情報収集してECサイトで商品を購買したりすることが一般化してきました。

経営学部の渋瀬雅彦准教授は、インターネット上に新しいコンテンツや仕組みが登場する中で、それらが消費者の心理や行動にどのような影響を及ぼしているかを研究してきました。

「インターネットなどの技術はとても便利で有益ですが、一方で負の影響も存在します。こうした負の影響がどのように発生するのかを明らかにすることで、新しい技術が適正に消費者に受け入れられることを目指しています」

たとえば、インターネットを利用した際に、以前利用したことのあるサービスの広告が何度も表示された経験はないでしょうか。企業は、インターネット上の利用者の行動履歴データに基づいて、パーソナライズされた広告を出稿することが可能となっています。利用者にとって興味関心に合う内容であれば有益ですが、一方で追跡されているような気持ち悪さを感じることもあるかもしれません。このようなネガティブな影響が発生する心理的メカニズムを解明するために、アンケート調査などを行って分析しています。

そして現在、渋瀬はこれらの研究を発展させる形で「AIが消費者行動に与える影響」を研究しています。

AIが作った広告に消費者はどう反応するのか?

近年、企業の広告にもAIが活用され、AIが作成した広告文や画像が私たちの目に触れる機会が増えています。しかし、多くの人は広告を見ただけでは、それが人間が作ったものなのか、AIが作ったものなのかを正確に判断できません。また、AIが作った広告だと気づいた場合、AIが作ったものだから「すごそう」「信頼できそう」「面白そう」と感じる人もいれば、逆に「人間らしさがなく冷たい」「お金をかけていない手抜き」と感じる人もいます。「このように、消費者がAIに対して抱く先入観や判断の傾向を『AIヒューリスティクス』と呼びます。私の研究では、AIヒューリスティクスがどのように形成され、広告の評価や成果に影響しているのかを分析しています」。

実際に、消費者のAIに対する知識や意識の差による影響について調査分析を行いました。その結果、AIについて十分な知識を持つ人は、AIの長所だけでなく限界も理解しているため、そのAI生成広告を冷静に評価する傾向があります。一方で、AIを日常的に利用していても仕組みを十分に理解していない人は、AIの能力を魔法のように感じ、「AIが作ったものだから正しいだろう」と過剰に
信頼しやすくなる傾向でした。

「消費者が気軽にAIを活用できるようになったため、AIに対する知識がなくても『自分はAIを使いこなしている』と思い込む消費者も増えていると考えられます。しかし、AIに対する知識が無い場合には自信過剰となり、AI生成物に対する正しい受け止め方ができなくなっている懸念があります。今後は、AIに関する知識や経験が、AIに対する信頼や判断にどのような影響を与えるのかをさらに明らかにしたいですね」

AIによる消費者行動の変化を解明したい

AIは広告を作るだけでなく、人が情報を集め、比較し、購入を決める過程そのものを変えつつあります。

「生成AIが登場して数年しか経過していませんが、企業のマーケティング活動を大きく変化させてきました。さきに紹介したAI生成広告の他にも、チャットボットやメタバース、バーチャルインフルエンサーなど、AIを活用した技術が浸透しています。そして、こうしたさまざまなAI技術に対して消費者の心理や行動が、今後さらなる変化が起きてくるものと予想されます」

今後は、AIに相談してどの商品をどこで買うかアドバイスをもらうことが一般的になるかもしれません。あるいは、買った商品をSNSで紹介する以前に、AIと話すことで自分を納得させるのかもしれません。

「さらには、人間が行ってきた作業をAIが代替することによって、“人間とは何か?人間が行うべきものは何か?”など、人間としての役割を考えていくことになると思います。消費者の心理や行動変化のメカニズムを解明しつづけることで、新しい技術の普及を手助けする。そのような研究を今後も行っていきたいです」

AIに対して消費者が抱く印象やAIが生成したコンテンツに対する反応はどのように変化していくのか。渋瀬が追いかける研究テーマは、AIを浸透させる上できわめて重要なものといえます。

※本記事は2026年7月に作成したものです。